初めて料理をしたのは小学生。家族に喜んでもらえるうれしさはずっと持続。
初めて自分で料理をした記憶は小学生の頃でしょうか。料理がしたかった、というよりは、シングルマザーだった母に喜んでもらいたかったという気持ちのほうが大きかったかもしれませんね。結局、喜んでもらえるどころかガスを使って「危ない!」と怒られたのですが(笑)
その時に調理したのが卵だったからか、今でもオムライスをつくるのが好きなんです。怒られはしたものの、自分が料理をすることで、誰かに喜んでもらいたい、食べてもらいたいというその時の気持ちが卵のふんわり感と似ていて、今でもその感覚は持続しています。
「飲食業界はハードワーク」と家族に反対されるも現場へ。
その後もずっと料理人になりたい気持ちはあったのですが、家族は大反対でした。飲食業界は体力を使いますし、長時間労働のイメージがあったんだと思います。結局、料理とはまったく関係ない四年制大学の学部に進学し、いざ就職活動の時期になった時はまさに「氷河期」のど真ん中。正社員として新卒で採用してもらうのは一番厳しかった頃でした。そこで「どうせアルバイトでしか働けないんだから」とレストランの現場に飛び込むことに。
確かに仕事はハードでしたが、幸運にも周囲のスタッフに恵まれ、料理人として少しずつ前に進むことができました。「自分は料理を一生の仕事にするんだなあ」という気持ちは固まりつつありました。
自分に余裕がないと、お客さまにベストなサービスはできない。
レストラン2店舗目で経験を積んでいた頃、生活のリズムや体調のバランスを崩し、自分にまったく余裕がなくなっていました。このままでは一生の仕事にしようと思っていた料理が「嫌いになってしまうかもしれない」という危機感もありました。
その頃、偶然「PicaPica」の求人に出会いました。「スペイン料理かあ、やったことないけどおもしろそうだな」と思った瞬間、自分の次のステップが見えたのかもしれません。
PicaPicaにはアルバイトとして入店後、正社員に。
もちろん忙しい時もありますが、休日がしっかりとれる環境で、定期的に自分のメンテナンスができるワーク・ライフ・バランスを手に入れました。自分自身に余裕がないと、お客さまに喜んでいただける料理も、ベストなサービスも提供できません。プロの料理人としてこれからずっと長く歩んでいくためにも、現在のバランスは大切にしたいと考えています。
次の目標はレストランプロデュース。料理と同じく、経営もクリエイティブワーク。
シェフとしてメニューは全て手作りにだわっているのですが、大変どころかとても楽しいのです。
先日はスペインの「cookpad」で見たレシピをヒントにして、肉料理のウィスキーベースのソースを作ってみたのですが、お客さまからとてもお褒めいただきました。自分がオリジナルで工夫したものを「おいしい」と言っていただくのは、素直にうれしいと感じます。結局、私は食べる人の笑顔を見たくて「何をつくろうか、何で作ろうか」と考えている時が一番幸せな人間なんだと思います。
これからの目標は、やはりレストランの経営について少しづつ学んでいきたい。自分の店にたくさんお客さまに来ていただきたいですし、料理を楽しんでもらいたい。そのためには経営に関する知識が必要だということも解ってきました。経理や財務、アルバイトスタッフの労務管理、ソーシャルメディアでの宣伝など、学習しなければいけない項目は多岐にわたりますが、いつかメニューをつくるのと同じく「店をつくる」というクリエイティブなワークも楽しめるようになりたいと思います。